こんなゲーム翻訳トライアルはイヤだ その2) 話者・ト書き情報がまるでない

(前回分はこちらから: 「こんなゲーム翻訳トライアルはイヤだ その1: 訳注を書く欄がない」)

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A) こんなゲーム翻訳トライアルはイヤだ(目次)

1) 訳注を書く欄がない
2) 話者・ト書き情報がまるでない
3) 訳注が訳文の何倍もの分量になってしまう
4) 出題元のゲームジャンルが偏っている
5) 出題内容のテキストの種類がごちゃ混ぜになっている
6) やたらと時間がかかる
7) 問題文に明らかな誤字・脱字や文法上のミスがある
8) トライアルには合格したものの、翻訳会社側が提示してきたレート上限が自分のレート下限未何
9) そもそもトライアルがない

※他にもあれば追記していきたいと思います。お聞かせください。

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B) こんなゲーム翻訳トライアルはイヤだ(詳述)

B2) 話者・ト書き情報がまるでない

会話文なのに話者に関するヒントがまるでないうえに、原英文から話者の老若男女が推測できない場合、
a)確証のないまま見切り発車で話者の素性を想定したうえで、口調が濃いめな訳文を回答するか、
b)老若男女全対応ではあるものの、日本語として不自然であったり、口調の味つけが薄い訳文を回答するか
のジレンマになってしまいます。

翻訳者視点の懸念

・「出題者はa)とb)、どちらの対応を期待しているのだろう。実案件だと場合によりけりだから、両パターン書かなくちゃいけないな」

・「仕事ならたとえト書きや添付資料がなくても前後のテキストからある程度アタリをつけるのに…」

・「自分は話者による口調の使い分けが得意なのに、いつもどおりに持ち味を出してしまっていいのだろうか?」

・「実際の仕事でもこんな感じで投げっ放しにするんだろうか?」

参入希望者の懸念

・「話者の素性がまるでわからない…」

・「話者の口調は推測で決めていいのかな?」

・「何パターンも思いつくけど、2つ以上書いたら下手な鉄砲数撃ちゃ当たるみたいで印象悪いかも?」

※実案件では「話者・ト書き情報がまるでない」ことなど茶飯事ですが、
特定の案件に対し少人数の即戦力翻訳者を募集しているのでもなければ、
トライアル問題のハードルが高すぎると
及第点未満の回答者 と 及第点近辺上側の回答者
の区別がつけにくくなってしまうでしょう。

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C) 逆に、こんなトライアルなら受けやすいかも

C2) 最小限の話者・ト書き情報が提供されていて、出題意図が推察しやすく、口調の変化をつけやすい

出題者側の工夫

・問題をいくつかの小問に分け、それぞれの場面および登場人物について簡単な説明を提示
e.g.「酒場でのケンカのシーンです。話者Aは荒くれ者の男性、話者Bは男装した貴族の令嬢です。」

・「口調に特徴をつけていい」ことを明示
e.g.「原英文にあるような、話者Aと話者Bの口調の対比をできるだけ再現してください。」

・場面の演出意図を説明
e.g.「話者Aと話者Bは価値観の違いゆえにお互いを生理的に嫌悪しあっており、それが一因でケンカになりかけている場面です。」

翻訳者視点の印象

・「いつもの仕事よりコンテキスト情報が豊富で訳しやすい」

・「いつもの仕事なら前後の文脈から推測するところだけど、トライアル問題はごく一部の抜粋だから、問題文で補ってくれてるんだな」

・「仕事だと口調はコテコテにしないように言われる案件が多いので、たまにはこだわってみますか」

・「出題者はちゃんと色々考えて出してきてるな」

・「行間の意味を行間に訳す腕の見せどころだな」

参入希望者の印象

・「こういう場面なら映画やテレビで何度も見てるから、イメージしやすい」

・「出題者が何を求めているのかがわかりやすいので、答えやすい」

結果としてどうなるか

・出題ジャンルの実案件での即戦力度合いを判断する材料が増えるでしょう。

・ストックキャラクター的な口調レパートリーの豊富さを推測できるでしょう。

・ファジーな翻訳指示に対する対応能力の判断材料になるでしょう。

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D2) まとめ: 話者・ト書きなどの最小限のコンテキスト情報、および何らかの翻訳指示を問題に含めましょう

ゲーム翻訳の仕事では話者・ト書き情報が不足することは茶飯事ですが、

最小限~適度な量の話者・ト書き情報を提示することで、

即戦力的翻訳者にも、参入希望者にも回答が書きやすい出題、

すなわち基礎能力の有無を確認しつつ、

応用力の片鱗を出してもらいやすい出題が可能になるはずです。

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なお、第3回はこちらです:

こんなゲーム翻訳トライアルはイヤだ その3) 訳注が訳文の何倍もの分量になってしまう

 

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About Garyou_Tensei

Freelance English-to-Japanese / Japanese-to-English video game translator, 15th year on the job and counting. Currently living in Hiroshima, Japan. Proud father of 2 children. フリーランス歴15年目の英日/日英ゲーム翻訳者。 にわか広島人。広島生まれの子供2人。

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