こんなゲーム翻訳トライアルはイヤだ その1) 訳注を書く欄がない

ゲーム翻訳会社のトライアルは出題する会社や担当者によって様相が大きく異なります。

その会社の仕事の仕方が想像できるものから、まるで見当もつかないもの。

その会社と仕事がしたくなるものから、トライアル自体を受ける気力すらしぼんでしまうようなもの。

まさしく十社十色と言えるでしょう。

そこで、

A) 受ける側、すなわちゲー翻フリーランサー/ゲーム翻訳参入希望者の視点から
受けにくく感じてしまうゲーム翻訳トライアルの形態や、トライアル問題の特徴

をいくつか挙げ、

B) それぞれについて詳述

したうえで、

C) 逆に、こんなトライアルなら受けやすいかも

という考察をしつつ、各項目について B) と C) と D)まとめ をセットにして
何日かに渡って書いてみようと思います。

– – –

A) こんなゲーム翻訳トライアルはイヤだ(予告代わりに題目だけ一覧)

1) 訳注を書く欄がない

2) 話者・ト書き情報がまるでない

3) 訳注が訳文の何倍もの分量になってしまう

4) 出題元のゲームジャンルが偏っている

5) 出題内容のテキストの種類がごちゃ混ぜになっている

6) やたらと時間がかかる

7) 問題文に明らかな誤字・脱字や文法上のミスがある

8) トライアルには合格したものの、翻訳会社側が提示してきたレート上限が自分のレート下限未満

9) そもそもトライアルがない

※他にもあれば追記していきたいと思います。お聞かせください。

– – –

今回は上記のうち、「1) 訳注を書く欄がない」について考察してみます。
2)~ 9) は後日投稿予定。

– – –

B) こんなゲーム翻訳トライアルはイヤだ(詳述)

B1) 訳注を書く欄がない

ゲーム翻訳は訳注が命です。とりわけ、実機の挙動確認どころか
画面すら見ずに翻訳作業を進めざるを得ないことが多い大作系英日ゲーム翻訳では、
限られた資料やト書きを元に推測や仮定に基づいて訳すことになる局面が多く、
場合分けをした複数訳例の提示や実機での確認を要する事項の申し送りなど、
訳注無しでは語れないほど重要です。

その訳注を必要十分に書く前提になっていないように見えるゲーム翻訳トライアルとは、
翻訳者視点ではそれだけで不安材料になるのです。

翻訳者視点の懸念

・「普段の仕事ならどこに訳注を書くかを問い合わせるところだけど、
忙しそうな会社だから、嫌な顔されないかな?」

・「訳注欄がないなんて、訳注を軽視する会社なのだろうか?」

・「ゲーム翻訳に慣れたコーディネーターが社内にいないのだろうか?」

・「合格して仕事が来ても、指示が大雑把だったりするのだろうか?」

参入希望者の懸念

・「コメントって書いちゃいけないものなのかな?」

・「勝手に欄足していいのかな? それとも別ファイルにすべき?」(回答用ファイルがExcel等の場合)

・「コメント機能使って訳注入れていいのかな? 別ファイル?」(回答用ファイルがWord等の場合)

– – –

C) 逆に、こんなトライアルなら受けやすいかも

C1) 訳注欄が明示され、書いてほしい内容と、書いてほしい分量の目安が明示されている

出題者側の工夫

・「検討した内容、判断の根拠(リサーチや参照先のURL)、迷った点、申し送り事項、可能であればゲームの実機で確認したい点などを訳注として記入してください。」と指示
(※トライアルは「翻訳者が問い合わせを一切せずとも指示内容に戸惑わずに勝手に回答してくれる」
のが一つの理想形だと僕は思っています。採点以外の手間をできるだけ省くためです。)

・回答用ファイルがExcel等の場合:訳文記入欄のすぐ右の列を訳注欄にしておく。
訳文記入欄、訳注欄ともにセルの書式設定で「折り返して全体を表示する」を有効にしておく。

・「訳注は各セルに対して100文字以内を目安としてください。」と指示(あくまでも目安)

・回答用ファイルがWord等の場合:
a)「コメントは、Wordのコメント機能を使って訳文そのものにつけてください。」と指示
b)「コメントは別ファイル(ExcelでもWordでもかまいません)にまとめてください。」と指示
c)「コメントは添付のクエリファイルにまとめてください。」と指示し、実案件で使うクエリファイルの白紙版を渡す

翻訳者視点の印象

・「実際の案件での処理方法に近い訳注が書けるので、やりやすい」

・「訳文そのものではアピールしきれない自分の強みをアピールする余地がある」

・「翻訳対象の原文は苦手ジャンルだけど、ジャンルを問わない申し送りスキルをアピールしてカバーできるかも」

・「画面を想像できていればこその場合分けなども書きやすい」

参入希望者の印象

・「うわっ、コメント欄がある。全部空白じゃマズいだろうから、できるだけ何か書こう」

・「ここは意訳したいんだけど、訳だけだと誤訳に見えてしまいそうだから、訳注で断わっておこう」

結果としてどうなるか

・訳注の記載内容が、個々の回答者がどれだけゲーム翻訳に慣れているかの判断材料になるでしょう。

(慣れている翻訳者は、後作業担当者のかゆい所に手が届く訳注の書き方を心得ているものです。)

・即戦力になりそうにない回答者は訳文のみならず、訳注欄でもあれこれボロを出して選別を容易にしてくれるはずです。

– – –

D1) まとめ: 訳注欄はぜひとも設けましょう

ゲーム翻訳の実際の仕事での訳注の重要性、

および、回答者をふるい分ける判断材料を増やす観点から、

訳注欄を設けない手はありません。

慣れている翻訳者ならいずれにせよ「勝手に実案件形式の訳注欄を足しちゃいました」
もしくは「別ファイルに訳注まとめました」とイニシアチブをとってくるはずですが、
どうせそうなるならば、あらかじめ書式を統一して採点&比較しやすくするべきでしょう。

– – –

こんなゲーム翻訳トライアルはイヤだ その1) 訳注を書く欄がない

…いかがでしたでしょうか。
僕自身はトライアルの出題経験はそこまでなく、ひたすら回答側の人間なのですが、
出題側&回答側双方のご参考になれば幸いです。

異論や反論、他の翻訳ジャンルでのやり方についてなど、コメントお待ちしております。

– – –

なお、第2回はこちらです:

こんなゲーム翻訳トライアルはイヤだ その2) 話者・ト書き情報がまるでない

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About Garyou_Tensei

Freelance English-to-Japanese / Japanese-to-English video game translator, 15th year on the job and counting. Currently living in Hiroshima, Japan. Proud father of 2 children. フリーランス歴15年目の英日/日英ゲーム翻訳者。 にわか広島人。広島生まれの子供2人。

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